最高裁 住友信託の抗告棄却。三菱東京・UFJ統合(8月31日付日経)

三菱東京フィナンシャル・グループとUFJグループの経営統合をめぐり、住友信託銀行が信託部門の統合交渉差し止めを求めた問題で、最高裁は住友信託の抗告を棄却する決定をした。

最高裁は、住友信託とUFJの基本合意書に盛り込まれた「独占交渉権」の条項について、「最終的な合意を成立させるための手段として定めたもので、合意成立の可能性がなくなれば条項に基づく債務(第3者と交渉しないこと)も消滅する」と判断した。ただ現状では「合意成立の可能性がなくなったとまでは言えず、条項に基づく債務はいまだ消滅していない」とした。

しかし@条項違反による住友信託の損害は、事後の損害賠償で償えないほどではないA今後、最終合意が成立する可能性は相当低いB差し止めを認めた場合のUFJ側の損害は相当大きい。こうした点から考えると、「仮処分命令で交渉を差し止めなければ住友信託に著しい損害が生じるとは言えない」ので、住友信託の申し立ては棄却となった。

契約における「独占交渉権」という条項に法的拘束力があるのか、ないのかが争われた初のケースで、契約、とりわけ企業間の契約において非常に示唆に富む判決である。

 

 

「独占交渉権」

仮処分の必要性

最高裁

合意成立の可能性は低いが、法的拘束力は消滅していない

住友信託側に著しい損害が生じるとは言えないので必要なし

東京高裁

法的拘束力はあるが、両者の信頼関係がすでに破壊されており、将来に向かって効力を失った

判断せず

東京地裁

法的拘束力あり

住友信託側に著しい損害が生じるのは明らかなので必要

 

例えばあなた(UFJ)が、ある人(住友信託)と婚約を交わしたのだが、その人よりももっと好きな人(三菱東京)が現れたので、その人(三菱東京)とつきあいたくなった。ところが、婚約者(住友信託)は、別の人(三菱東京)とのつきあい(浮気?)を妨害してきた。これが、今回の統合差し止め問題である。

今回の問題を男女間の三角関係とすべて一緒にすることはできないが、このように考えれば身近にとらえることができる。

すでにあなた(UFJ)は、心変わりをしているのである。「好きな人の心が一番素敵な家だと思います」という冬ソナの有名なセリフがあったが、婚約者(住友信託)が好きなあなた(UFJ)の心にはすでに「素敵な家」は存在していないのである。婚約者(住友信託)がどうしようとも、あなた(UFJ)が新しい人(三菱東京)のもとに行ってしまうのは、止めようのない流れである。最高裁は、その常識的な結論を、法の理屈のもとに判断を行ったと言えよう。

ただ、今回の判決にも示唆されているように、住友信託は、UFJ側の独占交渉義務違反を理由に損害賠償請求を行う余地は残されている。これは、婚約不履行の場合にも、同じく損害賠償責任が認められているのと同じである。

今回の問題を契機に、「戦略法務」の重要性が指摘され始めている。これは、この記事もある「契約を破る自由」にまで備えた法的手段の重要性である。欧米のビジネス社会では、今回のような「独占交渉」義務違反などに備えた違約金条項がもられるのが当たり前のようである。

企業間の取引において、いかに自社に有利なビジネスを展開するために、契約内容を十分に検討するか。今回の最高裁判決は、非常に重要な問題提起を投げかけている。

 

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