デル日本法人、職業安定法違反容疑(2005年8月11日付日経、朝日)
パソコン世界最大手米デルの日本法人「デル」(川崎市)が店頭販売員を採用する際、自社で面接したのに、人材派遣会社に紹介し、採用させ働かせていた疑いで、神奈川県警幸署は、法人としての同社と当時の採用担当者を書類送検する方針を固めた。
県警の調べでは、デルは02年8月、同社店頭販売員として勤務を希望した男性(30才)と面接、採用を決定。その男性を直接雇用せずに、派遣会社に紹介し、派遣社員として働かせていた。この男性は、デル本社での面接で「採用です」と言われ、社名入りの名刺まで持たされていたため、「デル社員として採用された」と思いこんでいたが、04年に2月頃に社会保険の加入について問い合わせをしたところ、自分が派遣社員だと知らされたという。同様の方法で、02年5月から、03年12月にかけて約170人を就労させていたようだ。
デル側は、県警の調べに対し、直接雇用だと社会保険料などの費用がかさむため、派遣にしたという。
個人的なことだが、最近当事務所で使用するパソコンはすべてデルからのリースである。つい数年前まではお客様好感度でトップクラスにあった会社が、デルのはずである。そのデルが、会社のために働き、会社の価値を創造する社員に嘘をつき、派遣社員として働かせていた、というニュースである。
直接の容疑は、職業安定法30条1項、33条1項の無許可での「職業紹介」行為であり、同法64条1号、5号により「1年以下の懲役又は百万円以下の罰金」の対象となる行為である。
しかし、ここであまり堅い法律論を議論するつもりはないが、今回のデルの行為は、そもそも労働基準法15条1項で規定されている「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」という大原則に反した行為と言えるのではないか。あるいは、この男性は、デルと労働契約を締結した考えており、実は相手方は派遣会社であったということである。とすると、契約成立に必要な2当事者間の意思表示の合致がなく、そもそも契約のないところで、この男性は働かせられていた、とも言える。つまり、契約のない状態で、デルから指揮命令が出ていたのである。これは、あきれた状態というほかない。どこかの詐欺師まがいの行為とも言えるであろう。
人材ビジネス関連のお手伝いをすることが多いので、よく派遣会社などから派遣期間の途中、あるいは終了後に「この人を直接雇いたい」という派遣先に対し、紹介手数料を請求出来ないか、という相談がある。しかし、有料、無料で反復継続して「職業紹介」を行うためには、「職業紹介事業」の許可が必要なのである。また、手数料の名目が「情報提供料」というものであっても、求職者と求人者をあっせんした対価であれば、それは紹介「手数料」とみなす、というのが当局の考え方である。
今回のケースでは、デルが派遣会社から手数料などを受け取っていたかは、不明であるが、いずれにせよ、職業安定法違反以前の、法違反、モラル違反の事態である、といえよう(角野)。
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